ネコの殿、蝉と遊ぶ。


とある日の昼間、ふとした弾みで蝉が部屋の中に迷い込んできました。それを妻が捕まえて殿にあげた。蝉は鳴きもせずじっとしている。殿はネコパンチじゃなくって、軽くつんつんしながら遊んでいるみたい。蝉はひたすらジッとしている。殿がいくらつんつんしても蝉は動かない。殿はそのうち飽きちゃって、蝉を見向きもしなくなりました。妻はその蝉を取り上げて外に出してやる。すると蝉はバタバタと飛んでいった。蝉さんよくぞ耐えた、我慢した。お外で、精一杯、遊べよ。
夜です。網戸の向こう側に、蝉がピタリと止まった。また、殿がつんつんしている。ま、反対側だから蝉にとっては痛くも痒くもないでしょう。どうすることもできず、殿はじーっと蝉を見ている。私が内側からポンと蝉を弾いた。蝉は庭に落っこちて、ジャワージャワーとうるさく鳴き出した。ごめん、ごめん。深夜だから、ご近所に響きます。しまったなあと思うも、蝉が相手だからなだめることもできない。ひたすら泣き喚いてから、やっとのことで鳴きやんだ。いばらくすると、いつのまにか蝉が網戸にへばりついている。さっきの蝉だろうね。殿をからかってんのかい。しかし、遊び疲れた殿はその下で寝てしまった。「ほら、殿、蝉さん。ここだよ」と言っても、軽く頭を上げるだけで、また寝てしまった。殿はたっぷりと蝉と遊んだ一日でした。