「函館、いきたいなあ」


退院してから一週間が経ちました。で、ちょっと入院の日々を振り返ってみると、とある日のことです。向かいのベッドの患者さんは、奥様らしい方がお見舞いに来ているようです。二人の会話はなく、テレビの音だけが聞こえている。で、突然、声が聞こえてきて、
「函館、行きたいなあ」
ぼそっと、向かいの患者さんがつぶやいたようですが、私にはしっかりと聞こえた。私は、北海道は行ったこともないから、いいなあ。
「いつ、行く〜」
奥さんの声が、さっきの言葉に被さります。ますます、私は羨ましく聞いていて、耳がダンボのようになる。おお、話しが速い。
「宝くじ、当たったらな」
あれっ、あれっ。
「そんなん、当たるわけあらへんがな〜」
と、奥さんが応えて、また静かになりました。あれまあ、そういう関西特有のオチだったんですねえ。
しばらくすると、テレビの声で、
「函館は、どうだった」
なるほど、二人でテレビのドラマかなんかを見ていて、そのシーンが函館だったんだ。それにしても、夫婦でテレビを見ながら、とりとめもない会話をするって、周りから見るとほのぼのしていていいなあ。しかし、宝くじかあ。年末ジャンボは、前後賞合わせて7億円になったけど、所詮はドブに捨てるようなものだからね。期待値が50以下だから、やっぱりやめておくか。宝くじは6年前に買ったっけ。じゃ〜4年後に、一等の前後賞を合わせて10億円くらいになったら買おうかな。