陸の、おりこうさん。


妻のいないときです。台所の奧で、ガサゴソガサゴソと音がしたと思ったら。ドスン、ペタッと伏せる音がして、その後、シーンとした静かな状態が続いた。私はちょっと気になって様子を見に行くと、陸がごはんの容器を抱えてこの状態なんです。人間の言葉は話せないんだけど、「とーさん、ごはんちょーだい。まだー、・・・。待ってるんだけど・・・。かーさんだったら、すぐにくれたよ。ねえー、まだー。お腹、すいたよー。ごはん・・・」などと思っているのか知らないけど、そんな風に、ただただ待っている陸です。ワンともいわないんだから。でも、あげないんだ。ずーっとこうして待っていたら、必ずご飯か何かがもらえるなんてことを覚えたらクセになるでしょ。そもそも、私がこうして覗きに行ったのが失敗だったんだけど。そんなに弱みを見せちゃ〜、ダメだから。心を鬼にして断固、あげません。でも、しばらくすると、また覗きに行ってしまう私。こちらをじーっと見て、ただただ待っている。しょうがないなあ。ジャラジャラン。ご飯を入れてやる私。ちょっと、だけだよ、といいながら。直ぐにガツガツガツと音が響いていた。しょうがないよね〜。