殿の、知らぬ間の外出。


数日前のことです。その日は、朝から穏やかないい天気でした。妻はいつものように、朝の陸との散歩から帰ると、洗濯に取りかかり、洗濯機が止まると洗濯物を引き上げて、2階のベランダに干す。洗濯物を干しながら、隣の庭にいるワンちゃんとふたことみこと挨拶をして1階に降り、テレビを見ながら朝食をとる。それが、いつもの日課だ。その日は、さらに時間が経った10時過ぎくらいに、廊下で寝ていた犬の陸が玄関の入口に向かって、ワンワンと強く吠えた。私もその声を聞いていたけど、威嚇したり興奮したりした声ではなく、ただ力強い声だった。妻はいつものように、陸〜、ほえない、と、陸を諫める。私たちも、たまにすることではあるが、玄関脇の小窓を開けて外の様子を窺う。ま、大抵は何事もない。不審者がしょっちゅういても困るよね。で、そのときも、たまたま妻は小窓を開けて外の様子を見た。すると、なんと猫の殿が、小窓の下を歩いていたという。あわてて妻は玄関を飛び出し、殿を素早く捕まえた。でも、その時の殿の様子は、まったく逃げる素振りもなかったらしい。妻は、えっ、なんで〜、外をあるいているの〜、だった。じっくり考えていくと、殿が唯一、家から逃げるチャンスは、妻が2階のベランダで洗濯物を干したときだけだ。ということは、殿は妻が気づかないうちに足元で一緒にベランダに出て、こっそりベランダの格子をすり抜けて、身を潜め。妻が室内に入ると同時に、屋根から物置の上に飛び移り、そこから木とお隣とのしきいを伝って地上に降りたものと考えられる。殿はベランダの閨からよく外を見ていたんだけど、景色を見ながらしっかりとそういう段取りを練っていたのか。ちょっとの時間ではあるが、もし殿がいないとわかっていたら、妻と私で大騒ぎだったのである。当然、近所を駆けめぐっての捜索になる。知らぬ間に戻ってきてくれたから、一番良かった。とにかく、良かった。最近は殿の脱出がなかっただけに、私たちはホッとしている。それだけに油断があったのかも。最近の殿は、たびたび外に出たそうにしていたから。帰ってからの殿は、実によく寝ていました。さぞ楽しかったことでしょう。出してやりたいけど、家の横はびしばしと車が通るから、とてもとても。とにかく、無事で良かった。知らないことが幸せって、結構あるもんだ。そうそう、陸、ありがとう。陸が教えてくれなっかたら、どうなっていたか。ありがとう。