おじいさんを見送る犬。


とあるショップで買い物をする妻を、私は車の中で待っていた。そこは専用の駐車場もないので、車が行き交う道路から路地に入った場所に車を停めて、私は車内で買物が終わる妻を待った。しばらくして、ふと気がつくと、向かいの路地の奥から、おじいさんが杖をつきながら犬を連れて、ゆっくり、ゆっくりした歩みでこちらの方に歩いてきた。その後ろには、影になりながら、奥さんと見えるおばあさんも杖をつきながら歩いている。犬は、引っ張ることもなく、遅れるわけでもなく、おじいさんに添って歩いている。やがて、道路まで来たおじいさんは立ち止まり、振り返っておばあさんが追いつくのを待つ。おばあさんが来ると、なにやらおばあさんにしゃべって、犬のリードをおばあさんに手渡した。おじいさんは、犬とおばあさんを残して、私の視線の左側に消えていった。おそらくその方向に、ゆっくり、ゆっくりと歩いていたんだろう。犬は身を乗り出すように、おじいさんが歩いていく方向を身動ぎせずに見つめている。おばあさんはその後ろで、しっかりとリードを持っている。まだ、犬はじっとその方向を見ている。そこで妻が帰ってきた。私は車を出した。ずっと先におじいさんは歩いていた。犬はまだ見送っていた。見送る陸を、いつも真正面から見ているけど、横から見るとそうなんだろうな。おじいさん、早く帰ってきてあげてね。