病室の、夜のざわめき。


もう私が退院して、2週間以上もたっちゃったんだなあ。時のたつのは早いものです。でも、未だに、入院3日目の夜のざわめきを思い出す。入院3日目の夜は、手術が終わった次の日で、腰や背筋を痛くする柔らかマットレスからも開放されて、尿道カテーテル以外は不自由のない体勢だった。午後9時の消灯時間を過ぎると、静かになる。しばらくすると、ゴゴゴグア〜。あるいは、グッグッグップッハ〜。個性的な鼾が聞こえる。だからといって、鼾がうるさいわけではない。私だって、寝てしまったらどんな鼾をかいているのか、それこそ冷や汗ものである。ま、もちつもたれつというわけで、おあいこです。

で、もっともっと深夜になると、窓の外からざわめきのような音が聞こえてくる。5階病室の窓を覆うような音。決して不愉快な音ではないのだけれど。得体が知れないと、確かに不気味だ。その音に対して、よ〜く耳を澄ませてみると大きな音と、小さな集団の音に別れているのが聞き取れた。大きな音は、ゲロゲロゲロと鳴く近くの蛙であり、小さい一面に広がった音は、遠くで鳴く無数の蛙であることが分かった。そういえば、前日も、この日も雨が降っていたんだよね。蛙だったので、ホッと安心した。なんせ、ここは病院。生い先短い命の火を狙って、魑魅魍魎が窓の外に待ち構えているのかも、と思ったもの。蛙で良かった。夜が明けて、窓から外を見ると、病院の敷地の外側に小さな田んぼがあった。発信源はそこだったんだなあ。