柏木江里子さん、最後の作品。

今日の昼に、宅配便で荷物が届きました。なんだろうと受け取ると、差出人の名前を見て、そうかと思った。葬儀のお返しで、箱は軽い。パッケージを見て、やっぱりそうかと思う。柏木江里子さんの、四十九日の法要が終わったという知らせと、お返しの品が入っていた。包装を解くと、パッケージの上に、ちょっと小さめの袋がある。中に、何か布のような物が入っている。取り出すと手拭いです。付いている紙に、彼女の最後の作品です、と書かれている。

柏木江里子さん、グラフィックデザインやテキスタイルデザインも手掛けながら、多彩な感性を広げて、いよいよ円熟期に差し掛かった時期に、ガンを発症しました。そして、闘病中もデザイン画を描きながら、この手拭いが最後の作品になったのです。それがこの手拭い。大胆で、ぐわっと花の勢いが迫ってくる感じ。いいです。迫力があります。そして、その手拭いには一枚のしおりが添えられていました。その内容は、こうです。

江里子布「芍薬
病室には、いつもスケッチブックがありました。お見舞いにいただいた花や実家の庭の花が、たくさん描いてあります。そんな7冊のスケッチブックから手拭いのパターに選び、自らデザインしたのが「芍薬」でした。と。

そして、柏木江里子さんは、この暑い夏の8月に亡くなった。享年48歳。う〜ん、江里子ちゃん、だんだんといいデザインになっているね。人って最期の時期を知ると、それに対して精気の凝縮が始まるのかもしれない。本当に可愛くって、ちょっとおっちょこちょいで、なんだかつかみ所のない人だったけど。残した作品は、人を現しますね。本当に、いいよ。この手拭い。このデザイン。

たかが手拭い。でも、手拭いに対しても、命を削っている人がいるんですね。そのデザイン。モチーフ。そのひとつひとつにストーリーがあるんですよ。どうして、そんなデザインにしたのか。そんな発想をどこで得たのか。柏木江里子さん、彼女が残したものにこそその世界があらわれている。今、妻はこの手拭いをどう飾ろうか考えている。それは、いつまでも残ります。しっかりと私たちの暮らしの中に息づいています。江里子ちゃん、ありがとう。