老夫婦の多い「ザめしや」というレストラン。

90歳になる父の、お気に入りレストランに「ザめしや」というのがある。いわば大衆食堂の現代版で、店内にはいると、まずトレーを取り、湯飲みを置く。で、進む先には、様々なおかずが並んでいる。刺身あり、カツあり、煮魚・焼魚、サラダあり、むろんそばやうどん、おでんもある。それらから好きなものトレーに乗せ、最後にご飯と味噌汁を注文して、席に着くわけである。そういう形式が、父にとっては好ましいのかも。

大きなショッピングモール内のレストランと比べると、値段もお手頃だ。ま、そんなレストランだとメニューが限定されるからね。それに、そんなにおいしいとも思わない。ハンバーグ店も肉の旨味がいまいちだったし、和食の店もそんなに感動がなかった。私は、チェーン展開の郊外レストランって、ほとんどおいしい店がないと思っているが、「ザめしや」も確かにおいしいという感動はない。しかし、選べる楽しみがある。

とある平日の昼頃に、やはり父と「ザめしや」に入った。そんなに混んではなく、7割くらいのテーブルに客が座っているだけだった。で、見廻したときその半分近くが老夫婦というか、60代以上の人たちだった。4人掛けのテーブルに夫婦が向かい合って座り、ほとんどが静かに食べている。モミジマークの車で買物ついでに立ち寄って、お昼だけは奥さんの手を煩わせないような気遣いなのかもしれない。それぞれが、なんだかほのぼのとしている。ゆっくりとしっかりと、おいしいものを味わっているという雰囲気。それに、老夫婦ということは、かなりのレピーターなんだろうな。さっぱりとした和食が、お昼にちょうどいいのかもしれない。値段も、2品とご飯と味噌汁で700円くらい。ショッピングモールのレストランだと、1000円前後はするからね。なにより、老夫婦だから味にはうるさいはず。たとえば、中華のチェーン店では老夫婦なんて、めったと見ませんから。

だから、老夫婦の外食は、どこでする。これが結構、注目すべきことかもしれない。彼らは、長い人生の中で味を知っているから。若い人や、20代、30代で賑わっている店はあてにはなりません。だって若い彼らは、食品添加物たっぷりのファストフードや、化学調味料たっぷりのスナック菓子で育っているから。「ザめしや」の客層を見ていて、そんなことを思った。ところで、「ザめしや」もプラスティックの箸なんですね。いいことです。防腐剤まみれの輸入箸なんて、危なっかしくってヤダもんね。木目のきれいな吉野杉間伐材なら大歓迎ですけど。