空き家に、灯りがともった。

sandenji2010-03-28

私は夜になると、玄関先でタバコを燻らす。玄関前の道は人も通るし車も通る。しかし暗くって人の顔など分からない。暗がりだから、こっちの顔だって見えない。闇の中のひとりとして気兼ねなくタバコが吸える。

その30メートルくらい先の高台に1軒の家がある。もちろん住宅地だから、何軒も家はあるわけなんだけど。その家だけが、いつも闇の中に沈んでいた。私たちが2年前の5月に引っ越してきて以来、その家はずーっと空き家だったのだ。

1カ月前に、その家を囲むカバーが掛けられた。改修か。そして屋根も外壁も見違えるようにきれいになった。やがてそのカバーが外れて、しばらくした数日前、突然に家の中に灯りが。新しい家族が引っ越してきたのだ。

昨日、その家の前を通ると、ガレージには自転車が3台、大阪ナンバーの車が1台。ようこそ奈良へ。大阪より奈良の方が涼しくっていいものね。ま、大阪の夏がくそ暑いせいもあるんだけど、平均気温で奈良の方が2〜3度低いですから。

今日の夜も、私はタバコを吸いながらその家を見上げている。家に灯りがあるって、本当に暖かさを感じる。なにより、一番喜んでいるのは、家自身じゃないかな。2階の明るい2つの窓は、ちょうど顔の中の目かな。目が喜んでいる。顔が、家が、笑っている。