トースターで焼いたサンマ。

もう10年くらい前になるけど、私が独身時代のアパート暮らしだったとき、無性にサンマが食べたいと思ったときがあった。当時は、杉並区の浜田山に住んでいて、駅の近くに、1軒だけ焼き魚がメニューにある定食屋があった。

ところがその定食屋が店を閉めてしまった。そりゃファミレスやら、イタメシやら、飲み屋とかは駅の近くにはあるんだけど、焼き魚とか、サバ味噌煮を食べさせてくれる飯屋がないというのは、どれほど悲しいことか。

それならば家で、ということに。狭いアパートにあるのは一口のガスコンロ。これではサンマは焼けない。そこでパンを焼くオーブントースター。これなら焼けるかも。しかしサンマの1尾はとても入らない。スーパーに行くと、頭を落として、腑も取り出したサンマが売ってある。これならいけるかも。

頭のないサンマ、ギリギリでオーブントースターに入ります。アルミホイルを舟形にして、中にサンマを入れ、まず5分焼く。チリチリといい音がして、焼サンマのおいしそうな匂いが広がる。おっと換気扇を回さなきゃ。さらにひっくり返して、今度は3分。

さ〜て、サンマが焼き上がりました。お〜、見た目が焼サンマ。当たり前だけど。さっそく食べる。半信半疑でやってみたから、大根おろしも用意してなかった。もちろんおろす道具もないが。パクッ。お〜いし〜い。へえ〜、トースターでも、こんなに美味しく焼けるんだ。その秋は数回、頭のないサンマを味わった。もちろん大根おろしも用意して。さんまには辛み大根が良く合うことも知った。定食屋では味わえない、たっぷりの大根おろしで焼サンマ。やっぱりこれだね。いまでもスーパーで頭のないサンマを見ると、アパート時代の焼サンマを思い出す。