夜中の庭から、ミシミシと鳴る音。

もう深夜も1時を過ぎて。私はタバコを吸うために庭に出ます。大分だったら、庭に出たとたん、ワーンと甲高い音で、何匹も蚊が襲ってくる。1本を吸う間に2〜3カ所のかゆいアザは当たり前だったが。この奈良は、蚊が少なくて助かります。

やばいと思うときは、廻りに殺虫剤を振りまいておけば安心。そんなわけで、タバコも落ち着いて吸える。さすがに深夜、道路を通る車も少なく、住宅街も静寂に満ちている。

そんな中で、庭の植木の地面辺りから、ミシ、ミシ、と微かな音がする。なんだこの音は。ちょっと考えてみる。そうか、この音は、きっと、あれだ。

次の日に、庭に出てみると、ありました。蝉の抜け殻が。ひとつ、ふたつと。しっかりと木の葉っぱを掴んでいるもの。地面にころがりおちたもの。何年も庭の土の中に生きていて、深夜にこっそりとはい出して、木にしがみつきながら、飛び立てる時をじっと待つ。小さな命が土を出て、動き出した音だったんですね。暑い日中となった今頃は、ジージーと近所を騒がせていることでしょう。

ところで、蚊に刺された後の、痒い赤いアザのことを妻は、ほろせ、と言います。私は、何、それっ、と。じゃー、そのアザのことを何て言うのよ、と。はん。えっ、そんなこと考えたこともない。ほろせ、に代わる呼び方って、何?発疹、じゃないし。妻は、岡山出身。大分でも考えたこともなかった。関西。そして東京では、なんというのでしょうね、ほろせ。東京では、蚊に刺されることも、なかったからね。