奈良は、暑い一日だった。


昼を過ぎて、しばらくすると室温は33.5度に達していた。いつもより濃い青空に、眩い白雲がゆっくり流れている。網戸の外からは、風が入り、カーテンを揺らしている。風が皮膚に当たる分、涼しく感じられるが、それでも妻はエアコンを入れようと言った。エアコン嫌いの妻が、自分から言い出すのは珍しい。それほど暑い一日の始まりだった。

1時間くらい経つと、部屋は心地良い涼しさで満ちている。室温は31.5度。通常ならまだ暑いと感じる温度だ。湿度は55%。それで心地良いのかと。エアコンの効いた部屋は、廊下に対して開け放っている。その床に殿がぐったりと寝そべっている。部屋からの冷気が、熱気をはらんだ廊下に流れ出すいい場所だ。ちょっかいを出してみる。目を開け顔を上げてこちらを見るが、また元のぐったりへ。暑いんだから、よけいなことしないでよ、と言わんばかり。

2階へ上がる。温度計を見ると、35度を越えている。クラッとするほどの熱気。熱が籠もりやすい2階は、5分と座っていられない。蒸し風呂のようだ。ダイエットにはいいかもしれんが。それでも夜はこの部屋で寝ているのだ。奈良は、けっこう夜が涼しい。

1階に降りて玄関を覗くと、陸がぐったりと寝そべっている。首にはアニマルネッカーをつけて。また皮膚病発生です。目を開けて横になっているが、びっくりするほど息が荒い。夏はしょうがないんだけどね。玄関のタイルの上は冷たい。しかし10分も経つと、自分の体温で暖かくなる。しばらくすると少し場所を移動している。りっちゃん、こっちの部屋、涼しいのに。それでもこちらにはこない。暑いからなのか、外を通る物陰にも吠えなくなった。

妻も、エアコンのない和室で、いつのまにかゴロンと寝入っている。テレビを点けたままで。みんなみんな動かない、暑い日曜日。この日の奈良の最高気温は35.7度。暑いはずだ。大阪は、36.2度。ひ〜え〜。京都は、なんとなんと37.4度。エアコンなしで過ごせた大分の夏が、懐かしい。

世田谷の古紙持ち去り裁判、最高裁が上告破棄。


東京都の世田谷で、ゴミの集積所から古紙類を無断で持ち去った業者が、有罪となり、罰金20万円の刑が確定した。これってなんだかバカげていませんか。持ち去る業者も悪いのだけれど、古紙を出す住民のマナーだって悪いのだから。朝の7時とか、8時以降に出すべき、とされているのに、こっそりと深夜に新聞紙などを置いていく。そんな人が、いっぱいいる。

私も2年前には、杉並のマンションに住んでいた。目の前が畑で、住宅街の通りを見渡せた3階が住まいだった。たまーに夜明けすぐの頃に、目が覚めてベランダでタバコを吸うことがある。

明るくなった通りを見ると、なるほど、もう新聞紙や雑誌の束が、道の隅に出されている。まだ5時過ぎだ。おそらく前日の深夜に出したのであろう。しばらくすると、2トンくらいのトラックが猛スピードでやってきた。キュッと止まると、運転手がバタンとドアを閉め、降りるなり、その古紙類を物色する。目星をつけた幾束かを荷台に放り上げ、素早く乗り込み、トラックをバフンと発進させ、すぐ次の集積所に止めた。

いちいち物色せずに、すべて放り込めばいいのに、と思っていた。あとでわかったんだけど、古紙も種類によって価値が違うのだ。たとえば新聞紙は、再生紙のコピー用紙の原料にもなる。ところがカラーページのグラビアなどが多い雑誌類はうまく漂白ができなくて、段ボールの材料くらいにしかならない。カラーのチラシだってそうだ。

よくモノクロのチラシがあるけど、白い紙に印刷したものは再生コピー紙になるんだけど、黄色やピンクの紙に印刷したチラシは、漂白ができない。白い紙に戻らない。つまりは高く売れないってわけだ。だから、古紙業者はその辺の事情をよく知っていて、どの紙束が高く売れるのかを見極めたうえで、物色しているわけだ。

さて業者ばかりが悪いのか。もちろん古紙を出す住民のマナーも悪いでしょう。これからは私たちは新聞紙や雑誌などの古紙が、どのようにリサイクルされて、再び紙や段ボールとして利用されていくのか、その過程をを知っておく必要があると思う。みんなじゃないにしても、古紙集積所を管理する人くらいは知っておくべきだ。新聞紙を出す時に、一緒に折り込みチラシなどを混ぜ込んで出している人がいる。そりゃー、一緒に配達されるんだから、一緒に出して当然、なんて思っているのかもしれない。でも、一緒はダメなんです。用途が違うから。私だって、新聞紙と、折り込みチラシは分けて出します。そうでないと、製紙業者が苦労するわけだ。

本当にリサイクルを考えるのなら、紙になる工程を知れば、紙も分別しなきゃ、と思うかも。業者も、高く売れる新聞紙だけを、お金を出して引き取ればいい。むーかし昔は、新聞紙がいくらかのお金になったものだ。それがトイレットペーパーに変わったが、業者は家まで引き取りに来てくれていた。いちいち集積所まで運ぶ労力もなかった。もういちど業者も含めて、みんなが得になるような回収方法を考えたらいい。そして、紙の種類による分別もしっかりして。でも、古紙の勝手な持ち去りはいけない。ちゃんと声を掛けて、引き取って、お金かトイレットペーパーと交換しようよ。