焦〜げこげ〜の焼き餃子。

焼き餃子

ガタンゴロンと音がして、妻の大きな声がした。あ〜、やっちゃった。瓶に入れてあった出汁の素が、狭いキッチンの床上にぶちまけられている。あ〜、もったいない。妻の嘆く声が、虚しさを誘う。

ちょっとしたはずみで、持っていた瓶が手から滑り落ちたという。ま、やっちゃったものはしょうがない。次からは、気を付けること、と、私は言った。

料理を終わった妻が、また浮かない顔をしている。餃子を焦がしちゃったと。ふんふん、なるほど、キッチンから焦げた匂いが。ま、いいじゃん、食べよ。テーブルに出された、手作り餃子。よーく見ると、上の方まで、かすかに茶色っぽい。

一個をひっくり返すと、見事に真っ黒。妻は言う、焼き餃子って、どうやって食べたらいいかわからないと。えっ、醤油と酢と、ほんのちょっとのラー油と。そうか、これまであんまり外食したことがないんだもんね。牛丼だって、食べたことがない妻ですから。

焦げているけど、さすが手作り餃子、中身は旨い。結局は全部、残さず食べちゃった。それはいいんだけど、妻の2つの失敗。今日は、なんだかイライラしていたという。顔ものぼせたように赤い。もう私たちも50代なかば。そういう年かもしれない。更年期障害。老化。私も陸との散歩で、数十メートルダッシュすることがあるが、時たま脚が痙りそうになる。段々と動作が以前のようにこなせなくなる。そんな失敗が表面化するのだろう。ま、ゆっくりと、ひとつひとつの動作を確実なものにしてっと。