昨夜、ワンチが、旅立ちました。

白い椿

時間は、午後11時45分。それまでは規則正しい、グー、グーという声が聞こえていたが、突然その声が不規則になり、駆け寄ると、グアーと大きく口を開けた叫び声、それが最後でした。

妻の娘が名付けた名前、ワンチンコンチン。享年、17才と幾ばくか。迷い犬だった彼が、縁があって妻の元に来て、長く妻たちを支えて、様々な事態にも話し相手になってくれていた、大切な家族の一員でした。

ボール遊びが好きだったと言います。どんなボールでも追いかけて、夢中になるワンチ。カミナリが嫌いだったと言います。雷鳴が轟くと、一目散に押入れの奥に飛び込んで、音が鳴りやむまで出てこない。

妻には、そんな思い出が17年分積み重なった、ワンチンコンチン。大分へ来てからは、初めて私との出会いがありました。しかし、その時は、もうボール遊びもできない、カミナリにおびえることもない。毎日、自分自身で懸命に歩き、以前の姿を取り戻したいという本能の性でしょうか、私の目に、その潜在的な力、犬本来の野生の力なるものがしっかりと焼き付きました。

そして、よくここまでがんばった。今は、毛布の上に、静かに横たわっています。陸も、悲しげに見守っています。本能でしょうか、種族が同じなら、その悲しみが確実に伝わっているような。ましてや陸が共に過ごした8年間は、その大半は陸のボスとして、彼を守る立場として、数々のエピソードを妻は私に話します。そして、大分のこの地へ来て半年間、みんなと過ごせた時間はきっと幸せにだったと、妻は言います。

妻の悲しみは、もっともっと大きいことでしょう。でも今は。ワンチ君がこの世に生きた証は、私たちが彼のことをしっかりと思い返してやること。ありがとう、ワンチンコンチン。ごくろうさま。もう彼は、ここにはいません。今は、仲良しだったハスキー犬、絵夢と一緒に私たちみんなを見守っていることでしょう。妻を、陸を、殿を、支え続けた彼、本当にご苦労様でした。今日は、やわらかな雨が降っています。悲しみをやわらげてくれるかのように。