大分の、涼しい夜。

大分の涼しい夜

昼間は真夏に近い陽気だが、なにか太陽のパワーが違う。暑くない。風も爽やかだ。気温は確かに30度を超えているのに。

夕方の散歩の時に、それははっきりと解った。いつものようにタオルを首に巻いて出掛けたのだが、一向にタオルの必要がない。前日などは、10分も歩けば汗がしたたり落ちたのに、今日は爽やかだ。

田んぼの中の道を通ったときにはっきりと解った。以前は熱気が和らいで気持ちいい、だったのが、この日は過ぎる風が、涼しいという感覚が変わった。これが大分の秋なんだろうか。

東京の9月は、もう正確には思い出せないけど、不愉快に暑かった。排熱、自動車、熱を含んだアスファルト。いくら公園の緑が、街路樹があっても、補いきれない熱気が漂い、行き場を失って澱んでいる。そんな初秋だった。

日がとっぷりと暮れ、深夜になるとそれがはっきりする。私は、半袖と短パンを、長いものに着替えた。もう蝉の声も聞こえず、虫の声だけが響いている。時折、部屋に舞い込む蛾もあまり元気がない。力なく机に止まっては、私に叩かれてゴミ箱に直行する。いよいよ大分で初めての秋。周囲はどんな移ろいを見せてくれるのだろうか。