軒下の、黒い居候。

1カ月ほど前、私がチラッと庭を見ると、黒い猫が岩をくり抜いた水入れに顔を入れ、水を飲んでいた。夢中で飲んでいたが、猫がちょっと顔を上げたときに、私と目があった。すると、猫はそそくさと逃げていった。

後日私は、なにか水入れのようなものがないか、と妻に。そんなもの何に使うのと返す。猫が通るみたいで、庭のばっちい水を飲んでいたから、庭木の水遣りのついでに、水を入れてやってくれないかと。

妻は、水だけでなく、殿のごはんと、さらに発泡スチロールの箱にいらなくなった衣類を敷いて用意した。その数日後、遠くからその箱を見ると、黒いものが入っている。どうやら気に入ってくれたようだ。私はタバコを吸いに庭に出るが、なるべく猫さんから見えない場所で吸うことにした。

いまは勝手にその猫をクロちゃんと呼んでいる。そのクロちゃんがいないときに、陸を庭に出すのだが、その寝床周りを盛んに嗅いでいる。もしいれば、追っかけ廻すことになって大変だ。

ま、ガラス越しに、時々殿の相手をしてやってくれたら、それでいい。殿の退屈も少しは紛れるだろう。殿は最近、カーテンをかき分けて外を窺っていることが多い。クロちゃん、よろしくね。