服の修理屋ですねん。

朝に、ピンポ〜ンとインターホンが鳴る。この時間は、ご近所の回覧板かなと思いながら、玄関を開けて外に出る。農作業のような割烹着を着て、頭にこれも屋外作業用の日除け帽子かぶった、おばさんが待っていた。

服の修理屋ですねん。私は、間に合ってます。ごめんなさいね。と、申し訳なさそうにいった。最初は、その格好を見て、行商のおばさんかな、と思ったが、服の修理とは、驚いた。

そのおばさんは、私に断られると、足早に住宅街に消えていった。早い話が、おばさんの飛び込みセールスなんですね。このおばさんは、裁縫が得意で、家計の足しになるなら、と営業に歩いているのか。それともご主人が、紳士服の仕立て屋をやっていて、おばさんは洋服の修理などのリサイクルを思いつき、営業に走っているのか、などと考えてしまった。

朝の早くから、断られても、断れても、次々と玄関のインターホンを押していく、おばさんを想像した。でもせっかく訪問しながら歩くんだから、チラシの1枚でも手渡すとかすればいいのにね。洋服のこんな修理や補修のご用命を承ります、とか書いて。

よく新聞の勧誘員とか、住宅のリフォームとか、大体はうさん臭い男の場合が多いんだけど、割烹着おばさんのセールスとは、意表をつかれました。なにより、服は大事に着ましょう。ほころびたり、破れたりすれば、修理して着続けましょう。いい服というのは、そうやって長く着られますから。2年前に別府へ旅をしたとき、街の片隅に、洋服の修理をいたします、と看板やポップに書かれた店が数軒あった。別府の人は、服を大事にするんだと感心したものだ。今でも、その店はあるのだろうか。