軽い、風がいい。奈良団扇です。


団扇、うちわ、です。奈良に生まれ育って、奈良団扇なるものを知らなかった。主に奈良で過ごしたは20歳をちょっと過ぎた頃までだった。若い頃は、伝統工芸や、それこそお寺や、仏像などには、まったく感心もなかったから、と言い訳気味に。

池田含香堂という奈良市街の三条通りに面したお店で買いました。そのしおりには、こう書かれている。奈良団扇は、そのむかし春日の社人、これを作れるより始まれるとぞ、正保二年に松江維舟の物せる毛吹草にも大和の名物を挙げて、澁団扇とあり・・・、などと説明は続きます。正保二年は、1645年だって。

で、明治になると池田含香堂の祖が、奈良の風物や天平模様を団扇の表と裏より紙を手彫りで透かしてくり抜いたんだって。だからこの図柄は、切り抜きなんです。妻が選んだのは、鹿と紅葉のさりげない図柄を。団扇前面に天平模様を切り抜きであしらったのもありますが、とっても高価。だから、これくらいがほどほどってことで。

で、手に持って扇いでみると、団扇がとっても軽い。それでいてしっかりした風が来る。なにより一目見て気に入ったのは、団扇の面の竹ひごにも紙がしっかりと貼られていること。このひごがむき出しになっていると、何度も扇いでいるうちにひごが折れたりするんですね。

明治の頃から、様々な改良を施して、今日に至りぬ、と、しおりには書いてある。さすがにいい団扇です。色は、ちょっと日焼けしたような、渋い色です。ほかに、鮮やかな赤や青もあったんだけど、落ち着いたこの色で。これが我が家で一番の団扇となりました。